「蒼子さま!膳の用意が出来たぞ!」




髪をハーフアップに束ね、袖のない甚平のような着物。
腕には白い帯を巻きつけた男。
頭には牛の角、頭の横辺りから湾曲に伸びた角が生えている。


それが、人型に化けた牛鬼だ。


もともとの妖の姿ではでかすぎて邪魔になるため人の姿に変えている。




「ありがとう。あの、でも蒼子さまってのやめない?私、そんなキャラでもないし。蒼子でいいよ?」

「蒼子さまは、俺を救ってくださった恩人だ!呼び捨てになんてできん!」




すっかり蒼子に懐いた牛鬼は、せかせかと蒼子の世話を焼こうとする。


あの後、屋敷に連れて帰った牛鬼を、多々良は敵の下についていた妖怪を受け入れるなんて、と渋った。
それは、もちろんわかるけれど、必死に説得して理解してもらえたのだ。



白玖は、なにも言わず、邪魔もしなければ手助けさえもしなかった。




「白玖も、いい加減少しは食べないと」



相変わらず白玖はあまり食事をとらない。
蒼子と共に眠ることは増えてきたが、それだけは変わらなかった。