「少しだけ。一日だけでもいいの。人間界に戻りたいの」



蒼子がそんなことを言いだしたのは、しばらく平穏な日が続いた日の事。
白玖に土下座をする勢いで頭を下げ、許しを請う。



蒼子には、どうしても行きたい場所があった。




「・・・人間界に戻ってどうする」

「行きたい場所があって。お願い。ちゃんと戻ってくるって約束するから」

「おれは、誰も信用しない。蒼子が帰ってくる保証なんてない」




白玖はそういうと、話を切り上げるため身体をぐるりと回転させた。
手放したくなかった。

自分の心を惑わす者。
自分の手の内に捕えたままにしておきたかった。




「お願い!本当に、一日だけ・・・」

「・・・・・・・、本当に、必ず戻ってくるのか」

「うん!約束する!」

「護らなかったら」

「白玖の好きにしていい。煮るなり、焼くなり、好きに」




そこまで言い切る蒼子に少し考えた後、渋々了承した白玖出であった。