『この人形すごい可愛い!』



目を子供みたいにキラキラさせながら人形を眺める花凛は入社当時と全く変わらない。





その純粋な瞳に色々な物を映しては、


すぐに行動に移してしまう。







コーヒーだって、
不味くしか淹れられなくて。



コピー機だって、
斜めに印刷はきれてて。




パソコンのキーボードまで
片手打ち。








こんなに使えない社員はいないなと半ば呆れながらも、


こんなに"一生懸命"って言葉が似合う奴もいないと思った。





始めて声を聞いた瞬間から、

何かが俺を動かしてたんだ。






いつか、
そのブラウンの髪を撫でてやりたい。




いつか、
その小さな唇にキスを落としたい。





いつか、

君に好きだと言わせたい。






凄く無理やりな交際スタートは花凛を混乱させたけど、
梶野や麻木に先を越される前に、と

俺が密かに焦っていたからだ。






優しく笑って俺を見て。




素直に喜んでは



素直に不貞腐れて。







ストレス社会で戦ってきた俺に、
小さな安らぎの時間をくれる、花凛が本当に愛おしくて。





俺の業績やルックスだけでしがみついてくる女なら腐るほどいるけど、



俺だって、
他の奴と何も変わらないって事を



その純粋な瞳で見抜いて欲しかった