お昼休み。
 学校の裏庭へ呼び出された葉菜はお昼を食べ終え、ひとり向かった。夏も終わりに近づき、入道雲と共にひつじ雲が見えはじめた青空には、秋の気配が感じられる。大きな木の木陰で、となりのクラスの男子が待っていた。
 恥ずかしそうに顔を赤く染めながら、

「未森さんのことが好きです!」

 いきなりの告白。
 緊張のためか、その声は僅かに震えていた。
 その純情そうな姿に、三森葉菜はちょっとした感動を覚えた。
 だって、いっつもそばにいるのは、ふんぞり返った大きな態度で、緊張の「き」も知らないであろう、ごうまんちきな男子だから。
 もやしみたいなひょろりとした姿に、邪魔くさいボサボサの前髪。おまけにダッサダサのビン底メガネの、ガリ勉オタク。大滝蓮。
 ね、ここまで聞くと、どこがごうまんちきな男子なの? って思うでしょ!?
 皆、騙されてるの。
 いま説明した見てくれは仮の姿で、いったんメガネを外すと、鮮やかな青く澄んだ瞳、眉尻は綺麗な弧を描き、鼻筋の通った高い鼻、魅力的な唇、シュッと尖った顎。そして、あの見ているだけで暑苦しい前髪の下には、聡明そうな額が隠されている。
 もやしの体だって着やせするのか、肩幅は広いし、弱々しい見た目と違って実際は引き締まった体つきをしている。ウエストは細くて、足は長い……って、ここまで聞くと超絶ハンサムで、完璧でしょ?
 本来の姿そのままで街を歩いたら、それこそ自然と女子が寄ってくる、女子取りホイホイの出来上がりよ!
 でもね、その外見に騙されてはいけない。
 いったん口を開いたら、ごうまんちきなエロ王子に変身するんだから!