「ただいまー」
と帰ると、ダイニングに居た和歩が、どうした、という顔で見る。

 余程、よろめいていたのだろう。

「ボルダリングに行ってきた」
と言うと、

「二度とやらないんじゃなかったのか」
と言う。

 瑠可は、荷物を空いている席に投げながら、
「そのつもりだったんだけど。
 やっぱり、上まで登ってみたいと思って」
と答えて、和歩の向かいの椅子を引いた。

 どっかりと腰を下ろすと、そのまま、テーブルに倒れ込む。

「綾子さんとお茶してきた」

「西島さんと?」

 この人、いつまで西島さんって呼ぶ気だろうな、と思いながら聞いていた。

「そう。
 楽しかった」

 すると、和歩は少し笑い、
「お前と西島さんは気が合うかもしれないな」
と言い出す。