小学校三年生にクラスでプロレスブームが起こった。


僕は、二年生の終わりに親から離れてその小さな漁師町に転校生として来ていた。


両親は父の仕事の都合の為に年の離れた妹は連れ僕の方を母方の祖父母に預けた。


余りに転勤が多いのがその主な理由だったようだった。


そこで初めてプロレスなるものを本格的に見始めたのだ。


そこでは、田舎の為に民放は三チャンネルしかなくチャンネルの権利は祖父にあった。


土曜の八時から全日本プロレスが有り裏番組で八時だよ全員集合があった。


最初は、子供だから八時だよ全員集合が観たくて仕方なかったが、一家に一台のテレビの権利は祖父にあった為に仕方なくプロレスを観るようになった。


祖父は、決して子供に厳しくはなかったが、プロレスや相撲ボクシング等が大好きだった。


僕は、最初は仕方なく観ていたプロレスにだんだんと魅了されるようになっていった。


日本人のジャイアント馬場やジャンボ鶴田も好きだったが、外国人選手が沢山出ていてそちらの方に魅了された。


悪い事ばかりするアブドーラザブッチャーや兄弟のバランスが絶妙なザファンクスや威厳のある世界チャンピオンのハリーレイス等シリーズ事にお気に入りのレスラーは変わった。



何より外国人レスラーの持っている独特の雰囲気は子供にとっては刺激的だった。



そんな外国人レスラーの中でも最もお気に入りはミルマスカラスだった。


マスカラスは、覆面レスラーでメキシコの出身という事だったが華麗な空中殺法を得意としていた。