「それは恋でございますね」




家に帰って早速、村瀬に話してみると。

表情を変えないまま、村瀬は言いきった。





「こ…恋…?」

「はい。
お嬢様は、その真宮様に、恋をされたのでしょう」

「恋……。
あたしが…真宮くんに…恋…」




口に出して言ってみると、一気に体温が上がったように、心も体も熱くなった。

…あたし、真宮くんが好きなんだ。





「好きになっても…良いのかしら…?」




あたしは、いずれ久我山を継ぐ人間。

偽名を使って学校に通う、嘘つきなあたしが、恋なんてしても良いのかしら?




「確かにお嬢様は、いずれ久我山を継ぐ立場。
そのお相手になる方は、やはりそれなりの身分が必要だと思われるのも無理はありません。

ですがご安心を。

旦那様は、お嬢様が好きになった方ならお認めになると言っております。
旦那様同様、奥様も、お嬢様には自由な恋愛をしてほしいと望まれています。

例え身分が低くても、学業が優秀でなくても。
お嬢様がその方を好きだと言えるのなら、どんな人を好きになっても良いと」





お父様…お母様…。

ここから遠く離れた本家で、お父様とお母様は暮らしているから、暫く会っていない。

あたしは村瀬から伝言を聞いて、凄く嬉しくなった。








あたし、真宮くんを好きになっても良いんだ。

もっともっと、話しかけてみようかな…?




あたしは自分でも知らないうちに笑って、村瀬の淹れてくれた紅茶を飲んだ。