広すぎる部屋に響き渡る、書類を捲る音。

静かな空間に、紙の音だけが流れていた。





「…どうだ?」




紙をひたすら捲る少女に、男性が声をかける。

少女は捲る手を止め、表紙を元の位置に戻すと、顔を上げた。




はっと思わず息を飲むほどの美少女だった。

睫毛の長い二重の茶色い瞳に、整った顔立ち。

結ばず伸ばしている黒髪も、豪華なシャンデリアの光を浴びて煌めいていた。




「お引き受けしますわ」



意思のこもった、ハッキリした口調で、美少女は頷いた。




「よろしく頼むぞ…美海(みみ)」




男性はほっとしたかのように、頬を緩めて笑った。







これが決められたことだとわかっている。

だけど、やっぱり、辛いわね…。





男性が部屋を出て行った後、

美少女が静かに涙を流したことは、誰も知らない。