――バタンッ!!――
勢いよく開けたせいで、壁に掛けていた優勝メダルが落ちる。
「……これ…。ホントは…。」
俺はメダルを掴むとまた走り出した。

ピンポーン―

「ハイ。まぁ…、!いらっしゃい。どうしたの??」
おばさんは少し驚いた顔を見せたが、穏やかな表情に戻った。
「これ…。アイツのメダルなんです。…アイツのっ…。おばさん…俺…。」
俺は久々に全力疾走をして、息が切れ切れになりながら伝えようとする。おばさんは肩に手を置き、
「入って。あの子の部屋を一緒に整理してくれないかしら?」
と穏やかな口調で俺に言った。

ガチャリ…
前に来たのは何年前だろう?
部屋にサッカーの色はあまり見られなかった。
元はと言えば、少年サッカーチームに小学生の頃誘ったのは俺だった。
意外とサッカーをプライベートでは切り離していたのかもしれない。―そんな事を考えながら部屋を見回す。
「…5年前のままなの。あの土砂降りの日、家を飛び出したまま…」
おばさんは机の上の物を片付け始めた。
「…欲しい物があれば持って行って。あの子もそう望んでいると思うわ…」
俺は、床に落ちている4,5枚の紙に気付き、拾い上げた。
「ゴミはここにね。」
おばさんがゴミ袋を広げる。
「はい。(何だろう…?)」
俺は気になり、1つ広げて読んでみる。
「…これ…。あの手紙…。」
そこには、先程の内容と似たような文が書いてあった。
何箇所も消しゴムで消した跡があり、そういえば、今まで手紙なんてもらった事が無い事に今更気付く。
あの頃は、サッカーが忙しいと言う事でアイツとも全然会えずにいた。

「…ありがとう…。俺、お前の優しさに気付けなかった…。自分の事で精一杯で…」
急に自分が恥ずかしくなった。アイツは1番の良き理解者だっのに、サテライトに落とされた時、アイツに笑われるんじゃないかと思っていた自分が情けない。