おばさんから渡されたのは手紙だった。
俺は手紙を読みながら時代を遡って行く。
始めの方はたわいのないアイツからの問いかけ。俺は小声で答える。
5年前と言えば、俺は大事な試合でPKに失敗してしまい、
トップからサテライトに落とされ、プロの洗礼を受けた時期だった。
半時間程読み進んだ手紙も、そろそろ終盤に差し掛かり、
話題があの時のPKになっていた。
『あのPKは緊張したよな!マジでいい緊張感を味わえた。
それでお前は肩に力入ってて…。実はチームメイトには悪いと思ったけど、あの時、お前が左に蹴りに来ることは分かってたんだ。
緊張すると左に蹴っちまう癖が、あの日も出てた。俺はお前がプロになりたがってたのを知っていたから、取りたくなかったんだ。せっかく掴んだプロだ。
1年も1つの失敗で無駄にするなよ!!……癖の事今まで黙っててゴメンな…。
ホントはこんな手紙出すつもり無かったんだけど、今のお前見てられないんだよ。
いつまでもライバルだからな!またPK対決でもしようぜ!!次はぜってぇー止めてやるよ!」

俺はいつのまにか涙を流していたようだ。いくつか文字が涙で浮かんでみえる。
ふっと我に返りよく見ると、握りしめた跡が手紙にはある。そして泥の跡も…もちろん自分がつけたものでは無い。

「…まさか…!?」
5年前、おばさんが言っていた事をふいに思い出す。

『何で、今日じゃなくっちゃ行けなかったのかしらっ…。手紙なんて…』

(――今まで、気付いていなかったのは自分だけだったんだ――。)
俺は走り出した。

手紙を握りしめて、アイツの笑顔を振り切って――。