いつからだろう。
物心のついたときには、いくつものライトに照らされ、たくさんのカメラが自分にむけられていた。
夜月 星蘭
よづき せいら、これが私のこの世界での名前だった。
かっこよくて、輝いてて。
私は、この名前が好きだった。
お仕事も最初のうちは、楽しかった。
頑張ればお母さんが褒めてくれたから。
お母さんは、『芸能界で輝く星蘭は、私の自慢。』といってくれた。
私は、お母さんに褒められたくて必死だった。
その甲斐あってか『天才子役 夜月 星蘭』として私は、有名になった。
いつも、たくさんの大人に囲まれていた。
ドラマに映画で忙しかったから、学校にもあまり行けなかった。
同年代の友達なんていなかった。
欲しいとも思わなかった。だって芸能界が私のすべてだったから。
お母さんがいて芸能界に私の居場所があればそれで良かった。
私のことを可哀想なんて言う人もいたけど私はむしろ幸せだった。
必要とされていることが。
でも、気づき始めていた。
この華やかな世界にいつまでもいられるわけではないということを。
夜月 星蘭はもうこの世にいない。