俺は今、ある教師から
逃げるべく、廊下を
走って屋上に向かっている。

名前は四浦満彦。

追いかけ回されるのには
理由があった。

遡ること三週間前の土曜に
俺は本屋からファミレスに
向かおうと横断歩道を
歩いていたら
小学生くらいの男の子に
信号無視をした車が
今にも突っ込みそうだった処を
助けたのがきっかけだ。

思った瞬間、体が動いた

運動神経には自信があった。

キャーという周りの悲鳴や
危ないぞという声を
全て無視して、
子どもを抱き抱えて
もといた場所に戻った。

『おい、怪我してないな?』

目に涙を溜めて頷いた。

よかった~

目付きが悪いせいで
よく、因縁をつけられるが
喧嘩やもめ事が嫌いだし
子どもは好きだ。

子どもを立たせて
もう一度怪我がないか
確かめてホッとした。

そこに父親らしい人が
慌てて駆け寄ってきたのだが
その人物は去年の担任、
四浦満彦だった。

二人とも一瞬固まったが
子どもの存在に気付き、
俺が行ことしていたファミレスに
三人で行くことになった。

それからというものの
この父子(おやこ)に
妙になつかれている。

そして、冒頭に戻るわけだが、
とうとう、屋上まで来てしまった……

逃げ道はない……

「もう逃げられないぜ」

ガシャンと背中にフェンスが当たった。

『わかったよ』

俺はその場に座り込み
お手上げという意味で
両手を上げた。

授業中の屋上には
俺と四浦しかいない。

そもそもの発端は
四浦から来たメールから始まった。
あの日から、毎日のように
桜耶が喜ぶからと
夕飯に誘ってくるのだ。

親父とは折り合いが悪く、
一人暮らしだから別に
断る理由はないのだが
照れくさくて何時も
[また今度な]と送ってしまうのだ。