あたたかい、ぽかぽかな陽気に包まれた校舎。
柔らかい日差しと桜の散る季節に、環境がかわるのを知ってちょっとだけそわそわ。
同じ制服に、色違いのネクタイをした生徒の後ろを歩く。
-----雪野 春、今日から高校3年生です。
待ちに待った、というわけでもないけど……
…正直、春休みが退屈で。
部活にも入ってないし、アルバイトもしてないからおうちでゴロゴロ~…
最初の3日くらいは良かったんだけどね?
それが何日も続くと、飽きてくるの。
やっぱり、楽しいことばかりしてちゃ麻痺しちゃうよね…!
なんて考えてたら、もう昇降口の目の前。
確か、食堂の前にクラス発表の紙が貼ってあったっけ。
毎年のことで、掲示板の前には多くの生徒が一喜一憂を繰り返してる。
…それにしても、人多いなぁ…
なんとかここから見れないかと、背筋を伸ばしてみる。
ついでに踵も上げてみるけど……
「うぅ……やっぱり見えない…」
当然の結果ながら自分の名前は愚か、上半分も見えない。
…名字が、「あ」から始まる名前だったらなあ。
こんなところからでも見えちゃうのに。
…仕方ないか。これも毎年恒例行事だもんね。
「…………」
視線を落とししょんぼりしながら、ほとぼりが覚めるのを待っていると、
「春~!おっはよ!あたし達、今年も同じクラスだよ!」
大きな声とともに、ドンッと何かがぶつかってきて体がよろけた。
うぅっ……
痛い、けど多分よく知ってるタックル…
その正体は、
「おはよう、海妃ちゃん。それに、楓大くんも…」
「おっはー!楓大と離れてマジあり得ないと思ってけど、春が一緒で、そんなのどうでもよくなった~!」
「おはよ、雪野。あと一年、またコイツのことよろしくな」
親友の海妃ちゃんと、その彼氏さんの楓大くん。