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湯呑みからゆらゆらと湯気が上がる。

緊張と不安で喉がカラカラだ。


背筋をピンッと伸ばして正座するシュウ。
その隣りに哲二さんが胡座をかいて座り、菜摘さんが淹れた熱々のお茶をズズズと啜った。


シュウと哲二さんの目の前には、机を挟んでシュウのご両親が眉間に皺を寄せながら対面するように座っている。

お父さんは腕を組み、座ってから始終目を閉じたままだ。


私は菜摘さんと並んで、和室の隅に腰を下ろしてその様子を見つめている。


部屋の空気は最悪。
ピリピリとした空気が漂い、誰も口を開かない。

この状況になって早五分。
だけど、とてつもなく長く感じるのは私だけじゃないだろう。



最初に口を開いたのはシュウだった。



「父さん、母さん。何も言わず勝手に家を出てすみませんでした」



そう言って、頭を深く下げるシュウ。
その声からシュウの緊張がヒシヒシと伝わってくる。


シュウのお父さんは微動だにもしない。お母さんはシュウのその姿に唇を噛み締めた後、私をキッと睨みつけた。



「シュウ、この子に唆されたんでしょう?そうよね?あなたが家出をするなんて何かの間違いなの、母さんちゃんとわかってるわ」



ね?と、諭すように前のめりになって言うお母さんに、シュウは静かに首を横に振った。