気付けば俺は鈴に接吻をしてしまった。
原田みたいに欲情して接吻をしたのではない。
鈴は確かに可愛いが、美人という程ではない。
ただ泣き出した鈴をみたらつい無意識でしてしまったんだ。
「んっー!」
「っ!…す、すまん!」
息が苦しそうな声が聞こえ、俺は慌てて鈴から離れた。
「さ、斎藤さん?なんで…」
「お、お前が落ち着くためだ。」
俺は火照った頬を隠すため腕で目元からを下を隠す。
そしてあくまで冷静を装う。
「……」
「……」
気まずい空気が流れる中廊下からドタバタと足音が聞こえた。
俺の部屋の前で足音が聞こえなくなると勢いよく障子が開けられた。
「どうしたんだ?」
「こっちこそどうしたんですか、山崎さん。」
俺は来た相手が意外な人だったので腕を下ろし、普段の冷静さを取り戻す。
「いや、大きな声が聞こえたと思ったからだ。」
俺はさりげなく山崎さんに、鈴の顔が見えなくする。
鈴はさっき泣いたから、きっと涙が残ってるだろうとおもってな。