*:.。. 5.



彼の後ろに付いて階段を上って行く間に、心拍数はどんどん加速して行く。

予想もしていなかった展開の連続に、頭も心臓も付いて行けていない気がする。


緊張し過ぎて、倒れたらどうしよう。

それくらいのドキドキだ。

嬉しいんだけど、心の準備が全然出来ていない。

いろんな意味で、できれば、事前にわかってる状態で来たかった.......


って、彼は「何にもしない」って言ってたじゃん!!

まったく何を期待してるんだか。

さっきまでと同じ感じで、普通にしてればいいんだって。


今は、本宮くんが帰るまで緊急避難してるだけ。

彼だって、何の気なしに家に入れただけに決まってる。

余計なことは考えないようにしなくちゃ。

せっかく気を使ってくれたのに、変に意識してたら、彼に失礼だ。


彼の部屋は二階の一番奥にある。

場所だけは聞いてたけど、こんなに早く中に入れてもらえるとは思わなかったから、ドアがガチャリと開くところを見ると、ちょっと感激してしまう。


「あっ、ねぇ、ちょっとだけ待ってて。」

「うん。」


でも、彼にしたら、こんなの何でもないことなのかな。

どうせ合コンで持ち帰った女の子とか、朱美さんとか、いろんな女性を連れ込んでるんだろうし。


って、玄関で待たされてるほんの僅かな時間さえ、存在の定かじゃない敵に嫉妬してるなんて、私、どんだけ好きになっちゃってるんだろう。

部屋の中で誰かの忘れ物とか見つけちゃったら、平常心のままでいられるかな.......