……ナイフで刺されて、俺は死んだ。
はずなのに、どうして今、そんな事を考えてられるんだ?
身体がふわふわする。
夢から覚めるような感覚に包まれて、俺はゆっくりとまぶたを開いた。
「……夢?俺は、寝てたのか?」
白い天井にある、蛍光灯の光を見ながら、顔の前に持って来た手を握ったり開いたりして、生きている事を確かめる。
そうだよな。
スマホから武器が出たり、狼男みたいな化け物に食われたり、そんな事が現実に起きるはずがない。
学校の廊下で倒れて、夢でも見てたんだ。
それが一番可能性としては高いよな。
簡素なベットで寝ていた俺は、一応脇腹を確認する。
ほら、あれは夢だったから、身体は無事なままだ。
そんな事を考えて上体を起こした俺は……室内を見回して画然とした。
「あ、あれ……?ここは、どこだ?」
俺の部屋でも、病院でもない。
保健室と思っていたのに……そうとはとても思えないほど、何もない部屋だった。
大きな部屋の真ん中に、ベッドが一つ。
ベッドから立ち上がった俺は、窓の方に歩を進めると……。
そこから見えた景色は、異様な物だった。