「高山……頼む、俺を殺してくれ」








「は?」


学校の廊下、トイレから教室に戻ろうとしていた俺に、同じクラスの三笠拓也がわけのわからない事を呟いた。


殺してくれって……何を言っているんだこいつ。


「殺せるものなら、殺してやりたいけどな……」


聞こえないように、俺はボソッと呟いた。


正直こいつは好きじゃない。


何かと俺に難癖を付けてくるし、手を出さない事を知ってるから、調子に乗って暴力をふるったりもする。


だけど俺は、それに逆らえずに、されるがままだった。


そんな三笠が俺にこんな事を言ったから、殺せるものなら殺したいとも思う。


という俺の声が聞こえたのか、ニヤリと笑った三笠。


ポケットからスマホを取り出して、それを俺に向けて画面に指を置いた。


……な、何だよ。


俺にスマホを向けたって、何がどうなるわけでも……。


と、どうして良いかわからずに首を傾げ、見ろと言う事かと、三笠のスマホに手を伸ばした時だった。











ヴヴヴヴヴ……。












俺の制服のポケットの中で、スマホが震えたのだ。