「私は母親として失格ね……」

いつも強気なお母さんから、思いがけない言葉が飛び出しました。
顔を見合わせる私達の前で、お父さんは無言で頷きました。

「どの子もどの子もいい子ばかりなのに……引きこもりになったり…夢ばかり見たり…漢字が読めなかったり……どうしてなのか、何かの間違いじゃないのか…って、いつもそんな思いばかりが胸にあった…」

優秀な「ひしょ」を務めるお母さんでも、どうにもならない現実を突きつけられる毎日。
引きこもりの大ちゃん、アイドルになりたい月ちゃん、漢字の読めない私…
皆、皆、お母さんの重荷でしかないような感じがしました。

お母さんは私達3人を眺めました。
1人1人の顔をじっくり見つめ、大きなため息をつきました。

「…皆…お母さんの子供でいて良かったと思うことなんて…なかったでしょ…?」

悲しそうな顔をするお母さんに、一番最初に反論したのは月ちゃんでした。

「そんな事ないよ!なんでそんなふうに思うの⁉︎ 私はお母さんの子供でいて良かったよ!ワガママ言っても通させてくれる…そんなお母さん、他にいないよ!」

アイドルになりたい…という月ちゃんを笑いながらも、お母さんは黙って応援してた。
月ちゃんはそれが分かってるから、一生懸命、弁護しました。

「僕も…母さんの子供でいて良かったよ……引きこもってる間、僕を無理矢理部屋から出そうともせず、じっと待っててくれたし…」

感謝と共に、大ちゃんはお母さんの味方につきました。