カサカサ…コソコソ…

聞き慣れない音がしました。
ゆっくりと薄目を開けてみました。

ボ〜っとする視界の中に、金色の毛が見えます。

(これ…キツネ色だ…)

キツネなんか見たことありません。
都会っ子だし、おじいちゃんもおばあちゃんも、同じ市内に住んでるから。

でも、その色はキツネ色だと思いました。

だって、細く吊り上がったような目が私を見てるし、
鼻はすーっと長くて細いし、
おまけに口は大きくて、クチビルは薄かったから…

「ふふっ…面白い…ここって、キツネが出るんだ…」

山の中だから、当たり前かなぁ…と思いました。
キツネさんは私の声を聞いて、怒ったような顔してニラみました。


「…怖がらすなよ」

声がしたので、左を向きました。
今度は、ツルツルの毛のない頭が見えました。

「…タコさんだ…」

直感でそう思いました。
顔が丸くて、色が赤っぽくて、おデコが広くて、シワが3本見えたから。

「目と鼻が丸い…タコさんって、口だけかと思ったけど…鼻もあるんだね…」

ケラケラ…と笑ったような気がします。
でも、あまりに眠くて眠くて…

「おやすみなさい…」

キツネさんとタコさんは、驚いたような顔をしました。
私は、何故、そんなに驚くことがあるんだろう…と思いながら、深く深く眠りました。




目が覚めたのは、お味噌汁の匂いがしたからです。
お味噌の香りに混じって、大好きなネギの香りがしてきました。