お腹いっぱいご飯を食べて、改めて海を眺めました。

近くで見る時は、思ったよりも狭いな…と感じたけど、遠くから眺めていると、やはり海は広いな…と思いました。
潮の香りもベタベタ感も、ここまでは追ってきません。

お母さんやクラスメートもいません。
私は自由です。
ここは私にとって、パラダイスです。


…でも、自由なパラダイスはすぐに不自由だと分かりました。

ここにはトイレがありません。
ついで言うなら、お風呂もありません。

手を洗おうにも、カラダを拭こうにも、水がなければできません。

(どうしよう…)

緊張してきました。

緊張するとマズいんです。
私はどうしてもトイレに行きたくなってしまいますから。


ジリジリ…としてきました。
ホントにトイレに行きたくなってきました。

周りの草むらや林の中を見回しました。

トイレ以外の場所で…

…なんて、とても無理です。


…走り出しました。
走るのは好きだと言いましたよね⁉︎
早くはないけど、遅くもないから、いつも逃げる時は走って…でした。

誰にも捕まりませんでした。
だから、鬼ごっこは得意でした。

そんな前のことを思い出しながら、辿り着いた場所。
そこの玄関を叩きながら、私は大声で叫びました。


「お願いです!!トイレ…トイレを貸してくださいっ!!」

ーーーーーーーーーーーーー