「『くらはし ののか』、高2です…」

ぺこん…と、頭を下げました。
タコみたいな顔したオジさんは、うんうん…と頷いて、ニコニコしました。
キツネみたいな顔したお兄さんは、ブスッとした顔でこっちを睨みました
睨まれても困ります。
私はまだ、名前と学年しか名乗っていません。


「…あんた、なんであんな所で行き倒れてたんだ?」

タコさんに聞かれました。

「オレ達が見つけなかったら、今頃はクマの餌食になってたとこだぞ!」

キツネさんが脅します。


「…クマ?」

見たことないので怖さは分かりませんが、餌食になるのは嫌だな…と思いました。


「見つけてくれて…ありがとうございました…」

もう一度、頭を下げました。
タコさんはニコニコしたまま、キツネさんは、またしても怒鳴りました。

「呑気に謝ってんじゃねぇ!このウスノロ!」

「…ウスノロ…?」

聞いたことない言葉を話します。

さっきの『オタンコナス』とは、どんなナスなのか。
『ウスノロ』とは、どういうノロマなのか…と聞きたくなりましたが……



……怖くて聞けませんでした。

キツネさんの目が、鋭く光ってて。
ブルッとした寒気のようなものが立ってしまったので。


両手で体を抱きました。

「…ショータ、怖がらせちゃいかん」

タコさんの穏やかな声にホッとします。
でも、キツネさんの顔は怖いままです。


「うっ…えっ……ぐすっ…」