放課後。


柏木君と一緒に学校を出た私。


足早に駅までやって来ると、間もなくホームに電車が入ってきた。


「少し混雑してるね。」


「…うん。」


電車に乗り込み、通路の中ほどまで進んだ私たちは、つり革に掴まった。


つり革、手は届くんだけど…背が低いから、だんだん掴まってるのがキツくなるんだよね…。


もう少し、身長が欲しいな…。


小さく溜め息を漏らした。


「伊織ちゃん、大丈夫?つり革を掴むのキツくなったら、俺に掴まりなよ。その方が楽だし。」


「ううん、平気。」


フルフルと首を横に振って、大丈夫なところをアピールした。


私が溜め息ついたせいで、柏木君に余計な気を遣わせちゃった…。


気を付けなくちゃ…。


そう思いながら、暫く電車に揺られていた私だけど、やはり時間の経過と共に、つり革を持つ手が疲れてきてしまった。


反対側の手に切り替えよう…。


つり革から手を離した時、タイミング悪く…後ろで立っていた人の大きな荷物が、私の背中にドンッと当たる。


衝撃で前方に倒れそうになる体。


でも、その瞬間…柏木君に腕を掴まれて、そのまま胸の中に引き寄せられた。