「……で、結局の所、璃子の好きな人はどんな人なの?」

 夕方、ショッピングモールの出入り口から外に出ると、落ちかける日が遠く見える。

 駅の方へ歩きながら、服やら雑貨やらの入った紙袋を重そうに持ち、訪ねた彩音はようやく話を聞く気になったようだ。

「うーん……と、背は高めで、人懐っこくて、笑顔が素敵で……」

 それから、と続けようとした時、鞄の中の携帯が震えているのに気がつく。彩音に断って携帯を探し出し、表示された名前を見て、一瞬息が止まる。

 ドキドキと高鳴る胸と上がる体温。その場に立ち止まった私を数歩先の彩音が訝しげに見ている。そして、駆け寄って「どうかした?」と、心配そうに顔を覗き込む。

 私はとにかく自分を落ち着かせて「大丈夫」と伝え、電話が切れてしまわないよう通話ボタンを押した。

「はい、もしもし」

『あ!璃子ちゃん』

 電話越しの声を聞いただけで、嬉しすぎて泣きそうになる。なにより洸君から電話が来ることが、少し前の私なら考えられないだろうな。

『今、どこにいる?』

「友達とショッピングモールに来てて、帰るところだよ」

『あのさ、急で迷惑かもしんないけど……』

「うん?」

『会えない?璃子ちゃんに会って話したいことがあるんだ』