だだっ広いショッピングモールは見渡す限り人で溢れていて、待ち合わせ場所に一人待たされる私は、行き交う人の流れをぼんやり眺めていた。

『璃子ー!!夏休みに入ってから会ってないよね?会わない?ていうか会おう!』

 一昨日、興奮気味に電話をしてきたのは彩音だ。そろそろ連絡が来る頃だろうとは思っていたので、二つ返事で返したら……

『彩音パティシエ特製スイーツ持ってくからね』

 と言い、日時と場所を伝えて機嫌良く電話を切った。

 正確にはパティシエの卵、なんだろうけど、何度も彩音の作ったスイーツを食べさせてもらった私からするとプロに劣らないほど美味しいし、見た目も華やかで、お金を出したいくらい……それほど彩音のお菓子作りは本格的だ。

 将来有望の人材で、コンテストなどで表彰されていたりもする。

 そんな彼女だけれど、パティシエになるという夢を持ったきっかけが実は……

「璃子ぉぉー!」

 吹き抜けの店内を響かせる彩音の大声に、私も、周りの全然関係のない人も、ぎょっと驚いて、一瞬静まり返る。