繁華街の脇道を抜け、メイン通りに入る。


家がどっちの方向だとかは一切考えず、ただがむしゃらに突っ走った。









「……っはぁ……っ」



どれぐらい走っただろうか。


全速力で走ったあたしは息も絶え絶えになっていて。


走る速度を緩めて、人の波に身を任せた。


歩きながら空気を吸い込めるだけ吸い込み、大きく深呼吸をする。



「ふぅ……」



頬を撫でる夜風のお陰で、少しずつ冷静さが戻っていく。





………あ。


人混みをすり抜けながら注意深く周囲を観察していると、視界にあるものが飛び込んできた。



イラッ〇マ……。



それを見た瞬間、足が勝手にその方向へと歩き出した。


ゲーセンの前に立ち、二階の手すりからぶら下がってるイラッ〇マを見上げる。


それを見てると、何だか無性に二階へ行きたくなってきて。


気付けばエスカレーターに足を掛けていた。





エスカレーターから降りて、トボトボと目的の場所へと歩き出す。



此処……。



目の前にあったのは中田と会ったお手洗い。


それを見た瞬間、此処であった出来事を思い出した。



中田に無理矢理つけられたキスマークに身震いして、十夜の唇の感触に頬が火照る。


言い表せないほど複雑な感情が胸中で入り乱れて。



「……っ」



もう感情の制御が出来なかった。



「……ぅっ」



口から洩れるのは、小さな嗚咽。