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「りーのー。そんなに怒んなよー。俺だって悲しーんだから」


「………」



可愛いらしくあたしの腕をツンツン突く陽きゅんに胸キュンするけれど、それでもあたしの不満はなかなかおさまらない。



「あー!あたしも行きたかったー!」





何故あたしがこんなにもムカついているのかと言うと、それは一時間と少し前、リビングに集まった時の事が原因だった。


堕天使壱様のある意味プロ並みの運転テクニックで無事帰還したあたしは、『凛音!無事で良かった!』と抱き着いてきた可愛い陽きゅんを思う存分抱き締めた後、リビングへと向かった。


『あれ?』


ドアを開けると、ソファーに居たのは零くんをはじめ、各チームの幹部さん達。


『零くん達、何でいるの?』


ついさっきバイバイしたばかりなのに。



『これから黒烏の所に遊びに行くんだ』

『……へ?』



思わず素頓狂な声を出してしまったあたし。


だって、まるで友達の所へでも遊びに行くかの様な軽い口調で言うんだもん。喧嘩しに行くなんて思わないよ。


っていうか、黒烏の所へ行くって……!



『よっしゃー!!あの男にアイスの恨み晴らしてやる!!』



やっとアイツを叩きのめせる!



『お前は留守番だ』


『……は?』



力一杯意気込んでいるあたしに突き付けられたのは、ショックな一言。



『留守番』


『な、何で!?』



あまりのショックに思わず立ち上がり、十夜に詰め寄る。



『あたしも行きたい!』



それからだった。

あたしと十夜の熾烈な戦いが始まったのは。



どんなに『行くっ!』と駄々をこねても、『お願い!』とお願いをしても、絶対に首を縦に振らない十夜。



『うー、あたしだけお留守番とかヒドイ……』



いつまでも不満を洩らすあたしを見かねたのか、はぁ、と溜め息をついた十夜がある決断を下した。



それは、“陽を置いていく”事。



その言葉に陽も不満を洩らしたけどスルーされ、十夜達は『行ってくる』と言って足早に出て行ってしまった。