その日、私は時を止める方法を考えていた。


超簡単図解サルでもわかる相対性理論なる書物を読みながら。


アインシュタイン関連の本を読めばできるかも、いや、何をやってもできないのはわかっているが、死ぬまでに一度はそういう不毛なことを真剣に考えてみるのも悪くないと思ったのだ。


全ては迫りくる三十路という名の恐怖の大王から逃れるために。


他にも錬金術師ヘルメス・トリスメギトスが残したとされる賢者の石による不老不死の術、王妃クレオパトラが探していたとされる若返りの秘術、幻の桃源郷についての文献にも手を出してみた。


例えそれがFラン大学の、しかも短期大学部卒業の自分には到底理解できないものであったとしてもだ。


わかってるわ、それらはどこまでいってもファンタジーであると。


ただ私は目を背けたかったのだ。

二十代が終わってしまうことから。

女にとって三十路は人生におけるミッドウェー海戦級のターニングポイント。

結婚?

キャリアアップ?

独立?


なのに、私ときたら……。


独身。

彼氏もいない。

会社員でも正社員でもない。

貯金は二百万ぽっち。

誇れる額ではない。

負け女の、ただいま第三形態!

あと一回の変身で地球を滅ぼせるのなら滅ぼしてやる。


デスボール!