――日曜日。

黒王子に強引に約束を取り付けられた薔薇園へのお出かけ当日。


「……はぁ。」


お布団の上でクローゼットの中に入っていた衣服を取り敢えず広げて並べた私は、重い重い溜め息を零していた。

……薔薇園って、どんな格好で行くのがベストなのだろう。


デニムにパンツはカジュアルすぎる?ミニスカートだと面倒だし、ワンピースか…いや、それだと、いかにも気合い入れてきましたって感じで引かれそうだ。

"何、期待してんだよ。"とか、あの澄まし顔で単調に言いそうだ、あの黒王子なら。

――うん、カジュアルスタイルで行こう。


今日はピクニックだと思えばいい。断じて、明日香の言う"デート"なのではなく、ただのピクニックだと。

ただ、その行き先がメルヘンチックすぎるけど。


重い腰を上げて、短パンとTシャツ、デニムを掴んだ私は着替えを済ませていく。

薔薇園に行くんだから、きっとたくさん歩くよね。

この格好でスニーカーを履いても、不自然な感じはしないだろう。


スニーカーを選んだ理由は足を痛ませないようにという理由だけであるが、心の中でスニーカーも今年の流行だと自分に言い聞かせる。

明日香がこの前教室で読んでいた雑誌には、"今年のオシャレは、スニーカーで着崩し!"って書いてあったし。

……いや、カジュアルスタイルにスニーカーは、最早着崩してはいないのでは、なんていう考えは脳内から追いやって、着替え終わった私はキッチンへ向かった。