――「最悪だ…。」


翌日。

登校早々、私は昨日のショックから立ち直ることもできずに机の上で生気を失っていた。


豊川先生との一本勝負で華麗なる敗北を決めた私は、その日のうちに入部届を書かされ、家に帰れば、道場に来ていた子供たちの指導をすっぽかしたことでおじいちゃんからこってりしぼられ、実行委員長の件も相乗効果となって散々な一日を過ごした。

修哉さんからはたくさんの慰めの言葉をもらった。

だけど……そんなものじゃ私の荒んだ心は一向に丸くならなかった結果がコレ。


『いつまでグダグダ凹んでんのよ。』

「いたっ、」


ペシッと頭上から降りてきた明日香のチョップに、私は小さく唸る。

そりゃあ、凹みますよ…。

小さな痛みを孕んだ頭部をさすりながら、むくっと起き上がった私に向かって、明日香が口を開いた。


『しょうがないでしょ?豊川先生は5段の剣道有段者だったんだし、』


昨日私が負けたのは仕方ないことだと、粗削りなフォローをくれる親友。

だけど、起き上がった私の顔は一向に晴れる兆しはなく、いつまでも曇ったまま。


「そうだけど、」


分かってるけど、でも、

あんなに簡単に負けちゃうなんて――…


「やっぱ凹むなぁ…。」


結局、1分前と同じように机に顔を埋めるのだった。