――お前、俺と一緒に独立するか?

――はい、大輔さんについて行きます!

その言葉を信じてしまった自分が悪いのかどうかも、全くわからない。

俺と黒崎さんの2人だけになった『ラグタイム』のホールには、時間が過ぎて行く音だけが聞こえていた。

「藤本さん…」

そう言って声をかけてきた黒崎さんに、
「すみません、1人にしてもらえないでしょうか?」

俺は言った。

そう言った俺に黒崎さんはためらった様子を見せた後、
「何かあったら、呼んでくださいね」

ホールから立ち去った。

ただ広いホールに残っているのは、俺1人だけになった。

椅子に腰を下ろすと、スマートフォンを取り出した。

アルバムと表示されているアイコンを指でタップすると、いろいろな写真――大半はレシピの参考にしようと思って撮ったご飯やスイーツばかりだけど――が画面に並んだ。