――お前は怖くない

そう言った藤本さんの言葉が頭から離れられなかった。

――朝貴は男だけど、お前は女だろ

そんなことを言って欲しい訳じゃなかった。

――双子だから顔は一緒かも知れないけど、性別は全く違うだろ

双子だけど性別が違うのはそう言う訳で…って、あたしは一体何が言いたいんだ?

と言うか、
「藤本さんも藤本さんで、何であんなことを言ったんだろ?

怖くないとか、性別は全く違うとか」

あたし1人しかいない部屋でそんなことを呟いても、答えてくれる人がいる訳ではない。

「あーあ、若頭藤本は一体何が言いたかったんだか!

と言うか、若頭も若頭で怖いものがあったんだな!

若頭も人間だったんだな!」

ごまかすように大きな声で言った後、1人なのをいいことに声を出して笑い転げた。