それまで過ごしていた平凡な日常が音を立てて壊れたのは1ヶ月前のこと。

あたしこと白石夕貴(シライシユウキ)は、コンビニのバイトで日々の生計を立てているフリーターだった。

大学を卒業してから今年で3年目。

5月の連休が終わってから10日が経った夕方のことだった。

その日も朝9時から夕方5時までのシフトを終え、廃棄処分を済ませたお弁当やパンを持って1人暮らしのアパートへ帰っていた。

「これで当分の食費は浮いたな」

袋いっぱいに入っている食料に、あたしはフフンと鼻歌を歌った。

コンビニでバイトしててよかったことは賞味期限が近いお弁当やパン、たまにスイーツがタダでもらえると言うことである。

もらえるものはもらっておかないと、それこそ“もったいないお化け”が出てくると言う話である。

アパートの前についたその時、
「白石夕貴さん、ですね?」

スーツを着た40代後半くらいのおじさんが声をかけてきた。