その日の閉店後。

誰もいなくなった厨房で、俺は夕貴に指導をしていた。

「そうそう、なかなか上手になってきたじゃないか」

包丁でにんじんを切っている夕貴の顔は真剣である。

昨日初めて包丁を握ったと言うこともあり、まだまだ腕はぎこちない。

なれるまで後少しと言うところか。

「次はたまねぎを切ってみるか」

俺は冷蔵庫から半分に切ってあるたまねぎを取り出した。

「はい」

包丁に貼りついたにんじんを落としながら、夕貴が返事をした。

「たまねぎは1枚1枚と薄く切るようにな」

俺の手からたまねぎを受け取ると、まな板に置いた。

トントンと、ぎこちない手つきでたまねぎを切り始めた。