ケータイ小説 野いちご

ラグタイム

Ragtime0

右を見ても、左を見ても、店内のほとんどは女性で埋まっていた。

たまに男性もいることはいるけど、彼女に無理やり連れてこられたと言う顔をしている。

かわいそうに…と心の中で彼氏に憐みの言葉を送った後、あたしは店内に流れているBGMに耳を傾けた。

店内のBGMとして使用されているのは、軽快なリズムのピアノだ。

これは“ラグタイム”と言う音楽で、19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカを中心に世界で大流行をした音楽ジャンルなのだそうだ。

黒人のダンスの伴奏音楽と酒場で黒人が演奏したピアノ音楽、そこに白人の客に受けのいいマーチなどの西洋音楽と黒人独特のノリがくわわり、さらにシンコペーション(切分法)を強調した初の軽音楽が“ラグタイム”の起源だと言われている。

…我ながらウンチクがあるな、あたし。

どこで使うんだと心の中で息を吐いたあたしに、
「はい、ティラミスと季節のフルーツタルト」

カウンターにスイーツが置かれた。

あたしはできたてのスイーツを両手に持つと、テーブル席へと持って行った。

…兄貴よ、怒らないから今すぐ帰ってきてくれ。

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