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 その数十分前




 王都正門前、ラヴェンデル地区




 

「だああ!!いい加減うッざいわ、くそ共ぉーー!!」



 そこでは特殊部隊ラウルが奮闘していた。



 倒せど倒せど底無しに溢れ出てくる冥界の使者たち。



 厄介なのは彼らだけでなく、『石』を持って戦いに参戦してきたグロルの部下たちだ、



 ラウルたち特殊部隊の者達は抜きにしても、魔法使いたちは『石』を使われれば魔力を抜かれて死んでしまう。



 その為、下手に戦闘に手を出せない。



 故に現在、膨大な数の敵の相手をしているのはラウル一人という状況に陥っていた。



「ラウル様、後ろっ」



 味方の衛兵たちの声で背後の敵に気が付き、ラウルは回し蹴りで敵を吹き飛ばす。



「お前ら邪魔だ!!はあはあ...『石』にあてられたらお前らも即死なんだぞ!!どっか行ってろ!!」



「嫌です!!ラウル様が闘っているのに我々だけ逃げることは出来ません!!」



 衛兵たちを心配するラウル



 それでも譲ろうとしない衛兵たち



 お互い頑固な主張を何度も繰り返していた。



「ラウル殿、大変そうですな。息も上がってらっしゃる。戦力にもならない部下を持つとその子守りに苦労されるでしょう」



 グロルの部下が気味悪く笑いながら、嫌味を言う。



「いくらバケモノと恐れられる貴方方でも、本物の『化け物』と、この数には勝てないというわけですね」



 ムカつくようなその発言に、ムッとしながらもラウルは必死に頭を働かせていた。



(ムカつくけど...流石にこの数はきっちーな...俺は接近戦タイプで広範囲の遠距離攻撃は苦手だし...クソ)



 敵をなぎ倒しながら瞬時にいろんなことをシュミレーションしていくラウル。



 だが敵に押されているのは事実で、



 ラウルが焦り始めていた時



 



 ウオオォーーーン───



 


(獣の鳴き声...まさか!!)



 突如響いた獣の鳴き声にラウルの表情がぱああっと輝いた。



 次の瞬間ラウルの周りを囲ってした冥界の使者、そしてグロルの部下たちが次々と倒れていく。



 よく見れば、何十匹っといった狼に似た獣の群れが突入し、敵をなぎ倒していた。