翌日、私は憂鬱な気持ちのまま学校へと向かった。


学校には基本的に電車で通学している。
送り迎えの運転手さんに頼んで電車通学をさせてもらっているのだ。
(本当は車で行かなければいけないのだけれど)
だってせっかくの普通の高校生なんだもん。


普通にみんながしているみたいにしたいし。

それにお金持ちってバレたらきっと誰も私に接してなんかくれなくなる。




「おはよう、千草」


玄関で靴を履き替えていると、後ろからぽんっと背中を叩かれた。
振り返るとクラスで一番話をしてくれる女の子、三好昌ちゃんが立っていた。


「昌ちゃん、おはよう」


昌ちゃんは入学式の日に早速校舎で迷子になった私を助けてくれた人なんだ。
すごく美人で、気さくで。それでいて頭もいい。


「どうしたの?朝から元気ないね」

「うん、ちょっといろいろあって」



お見合いさせられて、結婚相手が決まった、
なんてそれを言ったら昌ちゃんは信じてくれるのかな?


「千草?」


「あ、ううん、昨日夜遅くまで宿題をしてて、ちょっと寝不足なんだ」

「あぁ、なるほど。先週出された数学の宿題、難しかったもんね」


「そ、そうなの!」