《小松彗が目玉焼きを作り山岡悠がそれを食べなさい》


先ほどまでと全く変わらぬ口調で、声がそう言った。


彗は自分の名前が呼ばれた瞬間、ビクッと身を震わせた。


「目玉焼き……?」


百合が冷蔵庫に目をやる。


冷蔵庫の中には卵しか入っていなかった。


「なに? そんなのでドアが開くの?」


春姫が拍子ぬけしたような声を出す。


「彗が目玉焼きを作って僕が食べれば、それでいいんだよね?」


悠がそう言い、良が頷く。


「とにかく作ってみなよ、彗」


百合にも促され、彗がようやくその場から立ち上がった。


まっすぐ冷蔵庫へ向かい、卵を1つ取り出す。


流し台の下から丸いフライパンを取り出して、火にかけた。


ガスや水もちゃんと通じているようだ。