「琴ー? 起きてるかしら?」

朝目覚めると、お母さんの大きな声が聞こえた。


「今起きたよ」

そう返事してお母さんの元へ向かう。


「琴、あのね。最近学校いけてるみたいだけど、私今日仕事、明日の夜まで帰ってこれないの」

お母さんは申し訳なさそうに言う。


「うん。わかった」

でも、こんなの慣れっこ。


「ほんとごめんなさいね。仕事中になにか大きな症状でも出たり、なにかあったら私に電話してちょうだい」

お母さんは、私の心配をしてくれる。


でも、私は

「うん、お仕事頑張ってね」

必ず電話したりなんてしない。


私のお父さんは、私が幼い頃癌で亡くなった。


だから今はお母さんしかいないけれど、お母さんにとってはこんな周りには病気の人間しかいないなんて嫌だろう。


きっと私の存在も迷惑なのかも知れない。


お母さんには、心配させたくないんだ。


もう私には、お母さんだけ……。