どれ位眠っていたのだろう。

眠り過ぎたのか、意識はまだ少しボンヤリする。

自分の部屋とは違った見慣れない天井が視界に入り、ベッドにゆっくり上半身を起こす。

周囲を見渡すと、整然とした広いベッドルームに、景観のよい窓からの眺め。

私はこの部屋に来たことが以前…ある。

着ている服を確認するとグレーの簡素な木綿の服のままだった。

デジャヴ…。

どうしてまたコウの家にいるの?

警察署を出て駅に向かって歩いていたが、とにかく寒かったという所までは覚えている。

しかし、そこからの記憶がスッポリと抜けおちているのだ。

昨日の取調べを受けた時のコウの視線を思い出す。

無表情で何も感じ取れなかったが、軽蔑している、そんな空気はヒシヒシと伝わってきた。

それなのに、どうしてまた私はこの部屋にいるのだろう。

その時、不意に部屋の扉が開き見目麗しい彼が姿を現した。

でた!冷血鬼刑事!

「起きてたのか」

コウは白いTシャツにカーゴパンツを合わせ、グレイのパーカーを羽織っている。

ラフな格好のせいか、スーツ姿よりも随分若く見える。

もしかしたら私よりも年下なのかもしれない。

「どうして…また私がここに私がいるの?」

「警察署からの帰り道、熱を出して道で倒れてたんだよ。君が我が家にくる時はいつも意識がないね」

「倒れてた?私が?」

コウはベットに腰掛けると、そっと手を伸ばしてきた。

反射的に私は身体をビクリと硬直させる。

「熱を計るだけだよ」

苦笑いを浮かべ、コウはそっと私の額に手のひらを当てる。ひんやりとして気持ちがいい。

「うん、大分熱は引いたみたいだね」そっとコウは手を離す。