ノートパソコンのスイッチを入れると、ブーンと起動する音が聞こえた。

こうして会社に出勤すると、みるみる日常に戻り強盗事件は悪夢だったように思える。

あの日、コウを問い詰めようと遅くまで起きて待っていたが、なかなか帰ってこなかった。

朝起きると、着替えた形跡が残っていたので、一旦戻って来てはいたようだ。

居候させてもらっているとはいえ、言葉を交わすどころか顔を見ることもなく、すれ違いの生活が続いている。

そうして、あっと言う間に一週間が過ぎて行った。コウはきっと忙しいのだろう。

「あれー沖本、香水変えた?」

向かいに座ってる先輩、下関さんが鼻をひくひくさせている。

「気分転換にちょっと…」

「エゴイストプラチナム?色っぽい香りさせちゃって」

下関さんはニヤリと含みのある笑みを浮かべた。

鋭いツッコミに思わずドキリとする。こうゆう所は、妙な勘が働くから厄介だ。

色々事件の事を問い詰めたいところもあるが、それよりもコウに会えなくて淋しいのだ。

会えない5日間が1ヶ月くらいに感じる。

私は男に放っておかれる星の下に生まれたのだろう。

香りだけでもコウの側にいる気分になれるよう、コッソリ香水を拝借した。

下関さんにそんな事情を話せるハズもなく、言葉につまるとタイミングよく電話がなる。

「はい、MCカード開発推進部沖本です」

「警視庁の尾花です。沖本さんですか」

コウの直属の上司であるキツネ顔だ。