――――真夜中に鳴り響くサイレン。



紅い点滅と共にけたたましく吠えるそれは
彗星の如く通りすぎた。
鈍色に輝く車体が通りすぎる度、
住宅の明かりが灯っていく。
寝ていただろう住民が次々と
窓から顔を覗かす。

静寂と化した住宅街を
紅く光るそれは容赦なく進んでいく。


町外れの雑居ビルでその車は停止した。
息をつくまもなく、扉は開け放たれ
カツカツと2つの音が木霊した。



「――――観念しなさい!!」


ビルの窓には男が女を抱きかかえている。
そういうシチュエーションではないことは
明白であった。
女の首筋にはナイフが突きつけられていた。


「く、くるなっ…!!」


男こそこういうシチュエーションに
慣れていないのであろう。
ナイフを向けられている女のほうが
窮地に立たされているはずなのに
男の顔面はそれ以上に蒼白であった。


「さ、さすぞ!!」


「あなたには刺せないわ」


そういうと
容赦なく銃口が男に向けられた。



パンっ―――――――――



崩れ落ちる男、
真夜中に響く不似合いな音、
闇夜をつんざく叫び声、
血、汗、匂い…………………



「任務完了」



―――時は2116年、人は恋愛のもつれで
簡単に人を殺す時代となっていた。

恋愛暗黒時代と呼ばれる現代(いま)。

恋愛のもつれで殺人の危険性がある人物は
信憑性、心理面、社会的地位、
交友関係、恋愛遍歴など、
あらゆる側面から
黒と判断された人間はブラックリストに
登録される。

先程死んだ男もそうだ。
ブラックリストに登録された人物は
恋愛刑法第214条によって
恋愛のもつれにより殺人を犯す危険性があり
またその現場に居合わせ
拘束が困難と判断された場合
容赦なく殺すことができる。

恋愛暗黒時代と揶揄された原因のもうひと つはこのためである。





「渋谷区にて拳銃を所持した男が
人質をとり立てこもってる模様」


「まーた事件ー?」

「やれやれ、全然休めないじゃない…」

「現場に急行しまーっす☆」



彼女達は
恋愛のもつれを捜査及び取り締まる
専門の刑事、恋愛デカである。




恋愛警察❤24時
第一話「恋と殺人は紙一重♡ 」