彼女の膝裏に手を入れると俺の首にしがみつく美咲をお姫様抱っこをして寝室まで運ぶ。

そして…
ベッドの上に彼女を寝かせておでこにキスを落とす。

「無自覚なのにも限度があるぞ。そんな格好で出てくるなんて小悪魔にしか見えないからな…俺がシャワーから出てくるまでに寝てなかったらどうなるかわかるよな⁈」

ビクッと震えて顔が引きつる美咲を置いて、俺は部屋を出た。

自制している俺の身にもなれ…

さっきは、寸前まで欲望を抑えていたというのに…

まだ、その時期じゃないと思い留まり、
キスだけで満足しようと…己を叱咤して平静を装っている。

その俺にあの姿は毒でしかない。

あれだけ言えば、彼女のことだから寝たふりをして待っているだろう。

俺は、体の熱と頭を冷やす為にシャワーを浴びに浴室に向かった。

どれだけシャワーを浴びていただろう⁈

一向に熱は下がらず、彼女の姿が脳裏をちらつく。

あぁ、クソ…
待つなんて言わなきゃ良かった。

こうなったら、酔って寝るしかないとシャワーから出て体を拭くと、下だけを履いて冷蔵庫を開ける。

ビールなんかじゃ酔えないよな⁈

ちっと舌打ち、ふと横を向くとウイスキーが手付かずのままあった。

これだ…
ガラスのコップに氷を入れてロックで一気に飲み干した。

それでも、酔えない俺はガラスのコップとウイスキーのビンを持ってソファの上で時間をつぶす。

1時間ほどして寝室に戻ると彼女は、布団にくるまり目をつむっている。

寝たふりなのか?
本当に寝てしまったのか?
定かじゃないが、起きて待っていられたら、俺は彼女をうまく丸め込んで抱いていただろう。

彼女の寝姿にホッとして酔いがまわってきた俺は、ベッドに入って彼女を抱きしめて唇にそっとキスをして愛を囁く。

「美咲…愛してるよ」

彼女の頬がほんのり染まる。

フッ…起きてたのか。

気づかないふりをしてぎゅっと彼女を抱きしめ腕の中に囲む。

俺はチュッと彼女の頭部にキスを落とし

「おやすみ」

とつぶやいて深い眠りにおちていった。

朝、自分以外の人の温もりに目が覚め目を開けると俺の腕の中で寝息を立てている美咲。

好きな女を腕に抱いて目覚める朝が、こんな幸せだなんて知らなかった。

それなりに女とつきあってきたが、女と朝まで過ごしたことなんて一度もない。

いや…違うな。
ずっと一緒にいたいと思える女とつきあってこなかった。