でもここも十数年前までは美術室として使われていたと前に誰かから聞いたような気がするので、わたしは、あくまでここは美術室なのだと脳内変換することにした。

「入れ」と、相変わらず暴君っぷりがすさまじい百井くんに促されるまま、渋々中に入る。

まず一番に驚いたのは、どうして百井くんの制服のズボンのチェーンに美術室の鍵がぶら下がっていたのか、だったけれど、先生たちも扱いに困っているという彼のことなので、新任の先生でも脅して手に入れ、美術室ごと私物化しているのだろうと勝手に解釈させてもらう。


「……で、ここでなにをするんですか?」


それはさておき、聞きたいのはそこだ。

百井くんの返答次第では、もしかしたら大声を出すことになるかもしれない、この状況。

仮に大声を出すことになれば、旧校舎もその周辺も現役生はほとんど来ないために望みは薄いけれど、奇跡的に誰かが通りかかってくれるかもしれない希望だけは持ち続けていようと思う。

そう覚悟を決め、ごくりと生唾を飲み込み、百井くんの返答をじっと待っていると。


「脱げ」

「はいっ!?」


とんでもない言葉が飛び出してきた。