「あいたっ!」


掃除中、なぜか上から角が降ってきた。

脳天から足のつま先まで一気に走ったこの痛みは、絶対になにか硬い物の角のはず。

そう思い、声にならない声を発しながら、降ってきた位置と落ちた物に順番に目を向ける。

降ってきたのは掃除用具入れの上かららしい。

こんなところに凶器を置いておくなんて、と恨めしく思いながら、次に落ちた物の確認に入る。


「スケッチブック……?」


すると、A3とか、それくらいの大きさのスケッチブックが、うずくまるわたしの左隣に落ちていた。

どこにでも売っているような、いたって普通のそれには、見ると四隅の一角にべこっとなにかが当たったような凹みがあり、どうやらわたしの頭を直撃したのはその角だったらしいと繋がった。

美術部員の誰かの置き忘れ、かな。

表紙にも裏表紙にもところどころにカラフルに絵の具が付いていて、使い込まれている感はあれど、そう古いものでもなさそうだ。


わたしの通う高校は、伝統的に美術分野において優秀な成績を収めている生徒が多い。

わたしが半ば消去法で入った写真部とは違い、絵画、彫刻、陶芸など、多分野に渡って設備も十分に整えられているし、校舎裏が山に面していることもあり、陶芸の焼釜もある。