「やかましいわ!! この異常者がああ!!!!」


怒鳴り声が聞こえ、部屋に閉じこもっている少女がビクリと肩を震わせた。


「お前は頭がおかしいんじゃ!! 病院に行けや異常者!!!!」

「イヤアアア!! あたし頭おかしくなんかない!! おかしくない!!!!」


少女が耳を塞いでも突き抜ける、両親の罵声。

「……っく……」

叫びたい気持ちを必死に堪え、静かに涙を流す。


「大声出すなや!! 変な噂がたつだろうが!!!!」


ガタン

ガシャン


激しく争ってるような物音が聞こえ、慌てて少女は扉を少しだけ開けて、隙間から様子を伺う。


「このクソ女が!!!!」

父親が、椅子に座っている母親の頭を強く殴りつけている。


1度だけではなく、何度も、何度も。


「クソ女! いかれ女!!」


拳を痛めたのか、疲れたのか、罵りながら父親が、母親と距離をとる。



「……アハハハハハハハハハハ!!!!」


突然狂ったように笑い出す母親に、父親も少女も心底驚いた。


「うるせえわ!! とうとう壊れやがったか!!」

激昂した父親が先程と同じように、母親の頭を殴りつける。

「アハハハハハハハ!!」

それでも母親は笑い続けている。


「病院に行けや病院にっ!!!!」

殴るのと腕を引っ張るのを父親が交互に繰り返す。


「いたいよぅパパ……いたい、いたい…」

笑うことをやめた母親が、枯れた声で痛みを訴えるが、父親の暴力は止まらない。