振り向くと、そこにあったのは闇。
闇の向こうで幼い私が笑っているような気がした。
今更後悔しても後の祭りなのだが。
ふと違和感を覚えた。
目を向ければ沢山の手が私の手足に絡まりついている。
そこから段々と塩の塊に変化していく体を見て悲鳴をあげた。
しかし、闇の中では自分が声を出しているのかすらもわからなくなっていく。
恐怖を感じる反面で「さっきの塩の柱は今まで押し殺してきた私の感情に似ていたな」と冷静な自分もいる。
周りに嫌われたくないが故にしまいこんできた感情が知らない間に重荷になっていたのかもしれない。
そういえば、塩の塊には「無益なもの」という意味があると本に書いてあった。
自嘲の笑みが浮かぶ。
正しく、その通りではないか。
感情を押し殺してもそれは無益でしかない。
自分らしくいられないのがどんなに辛いかなんて嫌と言うほど思い知らされてきた。
…終いには声も上げず、抵抗もせず、塩の塊と化す姿をぼんやりと眺めていた。