目が覚めると、私は個室のベッドに手首と足首を縛り付けられ、身動きがとれなくなっていた。
「ひどいよ。」
すると、
ガラッ
と引き戸が開き、私が脱走しようとしていた時に見つかった先生と看護師さんが入ってきた。
「目が覚めたか。気分はどうだ。」
私は何も答えない。
こんなことしておいて、ひどい。
看護師さんが、
「診察しますからね、服のボタンを外しましょうね。」
と言いながら、私の胸に手を近づける。
私は、手足を縛られて逃げることができない。
身体をよじるけど、身体は動かない。
「イヤッ。怖い」
先生は、私の話なんか聞いてないのか、聴診器を胸に当ててくる。
全身に寒気が走る。
また思い出してしまった。
涙が頬をつたる。
診察を終えた先生が、服のボタンを閉める。
怖がる私を見つめ、
「嫌がるのに無理矢理診察して悪かったな。
怖いか。」
私はうなづいた。先生は、
「近いうちに警察が君に話を聞きにくるそうだ。
話せるか。」
と、優しい口調で問い掛ける。
私は、
「誰にも話したくない。」
と言い、目を閉じた。
それなのに、涙は止まらない。
先生は、
「分かった。俺達でも構わない。誰かに話す気になったら、聞いた人から警察へ話しをするが、それでもいいか。」
といい、私はうなづいた。
さらに、先生は
「俺は、小児科の佐藤幸治(さとうこうじ)。君の担当だ。もう一人いるが、今日は時間が遅くていないが、明日挨拶に来るから。看護師にも担当がいるから、また明日。
それから、バンドは今から外すが、もう嫌がらずに診察を受けれるか?」
私は、黙ってしまった。
そんなこと言われても、またあの恐怖を思い出しただけで、診察が怖くなるよ。
すると、先生が
「今日話をしたが、君は喘息といって、何らかの原因によって空気の通り道である気管支が痙攣をおこして狭くなって呼吸が苦しくなってしまうんだ。
今日も呼吸ができなくなっただろ?
原因を検査したが、アレルギーかどうかはまだわからない。
これから調べていくな。
今日は、もう寝なさい。」
私は黙ってうなづいた。
先生は、それを見ると、椅子から立ち上がり、看護師さんと出ていった。
手首、あざができてる。
あざ
しばらくして、私は眠りに落ちた。
ここ?施設、戻ってきたんだ。
玄関を開けると、館長が仁王立ちで待っていた。
「おい!こんな遅くまでどこにいってたんだ!
警察に補導でもされてみろ!
ただじやおかないからな!
ちょっとこっちにこい!!!」
黙って着いていく。
この後何が起きるか分かってる。
我慢さえしてればすぐ終わる。
手を無理矢理引っ張り、私を布団に寝かせる。
酒臭い。
タバコの臭いも。
やめて。
館長は私を殴り、裸にし、、、
やめて。気持ち悪い。
私は毎晩、館長に身体を汚された。
もう汚い身体。
こんなことが何年続いたのか。
始まりは高校に入った春。
前の館長が亡くなり、新しくきた館長となってからだ。
きっと、他の子もやられてるにちがいない。
私の身体は、タバコを押し付けられたり、棒で殴られたり。
あざだらけだ。
もう死んだ方がましだ。
ハッと目を覚ました。
ん?
そっか、ここは病院だった。
もう、終わったんだ。
いつまで続くんだろうかと、毎日のように思ってた。
早く忘れたいと思っても、今日のように誰かに身体を見られたり、押さえ付けられると、思い出してしまう。
怖い。
今何時だろう。
携帯電話を見るとまだ日が変わる前。
携帯の充電は、もうほとんどない。
充電器は施設だ。
あんな怖い夢見たら、もう寝られないよ。
その後、一睡もせず朝を迎えた。