目の前で大量の血を吐いて倒れた川瀬由里子。


苦しそうに喉を掻きむしり、のたうち回る彼女を見たせいか守の手はカタカタと震え、手に持っていた紙コップを落としてしまった。


パタッという床に紙コップの落ちた音が響く。


「おいっ!大丈夫なのかよ!」


落ちた紙コップを気にせずに、動かなくなった由里子へと駆け寄ろうと守がして一歩前へと踏み出したその時、


「気をつけて近付いた方が良いですよ」


自棄に冷静なそんな修二の声が聞こえた。


「気をつけてって何だそりゃ?」


足を止めて、修二を睨み付けながらそう訊き返すが、修二の顔は変わらないまま。


そして、さっきと同様のトーンで話し出す。


「由里子さん、血を吐いてますよね。その血で感染するものかもしれないですよ」

「血で!」



マジかよっ!

感染って!

……ヤベェぞ。それは。



そう瞬時に思った守はその場に固まってしまった。当然ながら固まってしまった守はもう一歩も動こうとしない。