「直美、今どこかな?電話、気がついたら連絡してね」

約束した27日はランチした後一緒に坂木さんのギャラリーに行く予定にしていたが、待ち合わせの時間を過ぎても直美は現れず、痺れを切らして電話してみたが、留守電になるばかりで捕まらない。

夜勤明けだから休んだほうがいいと言って、遅い時間に待ち合わせをするつもりだったが、直美は寝ないでそのまま出かけほうがいいと、昼前集合を指定したのだ。

案の定というか、直美のことだからきっと眠ってしまったのだろうとは予想できるけれど、初めて降りた駅で地理がわからないこともさることながら、待ち時間の予想も立てられない状態には困ってしまう。

しかも、今日はキャラリーを見学した後、そのまま合コンに一緒にいく算段。

憂鬱な気分に拍車がかかる。

風が凌げる駅前で待って、そろそろ1時間になる。

昼ごはんを食べてないから、おなかは空いてくるし、一人ぼっちで寂しいし、何より寒かった。

坂木さんには余裕を持った時間を連絡してあったので、急ぐ必要はない。

入った店が混んでいて遅くなってもゆっくりランチを食べられる時間を考えていたことが、こんな形で有効に働くとは思わなかったけれど、心配ごとは少ない方がいい。

しかし、このまま直美を待っていてはギャラリーで過ごす時間が減ってしまうし、あと30分待って来なければ一人でもギャラリーに向かおうと決意して、冷え切った指先に息を吹きかけて少しでも暖を取る。

「高野さん?」

柔らかい男性の声に名前を呼ばれて視線を上げると、細身のロングコートを羽織った坂木さんの驚いた顔。